preface時計と王冠

序文

主人公2人が地下世界に迷い込み、
家に帰る方法を探して異世界を旅するお話。
地下世界をぐるっと一周することで、
この舞台をざっくりとご紹介します。

主人公:僕 & ティアラ

時計と王冠

is00舞台袖:起

僕とティアラは、所謂(イワユル)幼馴染み。
生まれた時から、何をするのも一緒だ。

小学校(プライマリー)から帰った僕らは、
いつものように遊びに出掛けた。
広場の隅にある涸れ井戸探検。
特別なコトは何も無い。
夕方には、家路に着く筈だったけれど――
僕らの好奇心は、
地底世界への入口を探り当ててしまう。

見知らぬ世界で二人きり。
それでも大して不安にならなかったのは、
"二人で居る"というコトが、
あまりにもフツウのコトだったからか、
あまりにもヘンテコな...
この世界の所為だったのかもしれない。
兎も角、帰り道を探して、
僕らは不思議な地底を旅するコトと成った。

時計と王冠

is01第1幕

  • 第1幕 「涸れ井戸の底の世界」

  • 第1章 「落ちるというコト」


    その不安定な(ピークで目を覚ますと、僕はティアラと二人きりだった。

  • 第2章 「拡がりの無い無限」


    其処はただ... "閉ざされているに過ぎない" 無限だと分かった。

  • 第3章 「微風(ビフウ)ナイトメア」


    (オビタダ)しい数の悪夢が、微風(ソヨカゼ)に乗って嘆きをバラ蒔き始める午後。

  • 第4章 「月キツツキと緑青(ロクショウ)の雲」


    月キツツキが出会ったのは、役立たずの雲だった。

  • 第5章 「正午の微睡(マドロ)み」


    誰もが目覚めぬ永遠の極地で、一人の作家が床にインクを零した。

  • 第6章 「調整中」


    その駅には、お釣りの返ってこない自動販売機(ベンディングマシン)しか無かった。

  • 第7章 「遅くて、不味くて、高い店」


    僕とティアラは、恐る恐る店内に足を踏み入れた...

  • 第8章 「出口への斑猫(ミチシルベ)


    洞穴に閉じ込められた僕は、ティアラが一緒でないコトを喜んだ。

  • 第9章 「不安定な(ピーク)


    麓では、数少ない村人たちが怯えながら暮らしていた。

  • 第10章 「最も強い雨」


    リテ村に降るというその雨は、僕らの逗留を拒むかのように...

is02第2幕

  • 第2幕 「水と風と森・予告の痕跡」

  • 第1章 「大雨の通り道・ミョミョセ街道」


    歩いていた道が、唐突に川と成った。

  • 第2章 「流れに逆らわず()け」


    確かに沼ヘビの云う通り、僕らは無傷で湖に辿り着けた。

  • 第3章 「ティ湖に、"思い通り"の神様在り」


    其処でカミサマが紡ぐ言葉は、台本に書かれた台詞(セリフ)でしかない。

  • 第4章 「濡れた金平糖と、醤油漬け麩菓子の晩餐」


    異文化交流が難しいのは分かってたケド、流石にソレは。。

  • 第5章 「脚本家の憤慨」


    僕らの不躾さに、ティ湖の脚本家が遺憾の意を表明。

  • 第6章 「勾留(コウリュウ)を伴う交流」


    無愛想な水精(ニンフ)が見張りに就き、ソレが脱獄の合図と成った。

  • 第7章 「ムラサキ色の弊害」


    どうにか平原に出られたのは良かったケド、その色は...

  • 第8章 「フィアリス・デコレーション博士」


    原色平原で出会ったのは、銀色に輝く勲章を背負った(ノミ)だった。

  • 第9章 「不孝者の残像」


    博士の助言で、僕らは不孝者の残像を探すことにした。

  • 第10章 「愛に満ちた家」


    話に聞いた通り、探し森の奥で見つけた "家" は、確かに愛に満ちていた。

is03第3幕

  • 第3幕 「the house filled with love will」

  • 第1章 「紹介状が、愛を教えてくれる」


    僕らは愛に満ちた家に、不孝者の残像からの紹介状を渡した。

  • 第2章 「フクロウが一晩に2万回鳴く理由(ワケ)


    「ティアラに話がある」と云われ、僕は森で時間を(ツブ)すコトにした。

  • 第3章 「素晴らしき(ホスト)による、素晴らしき接待」


    旅の疲れからか、ティアラは浮かない表情を見せるだけだった。

  • 第4章 「誰かが居る...?」


    背筋が凍りそうな "ひたひた..." という足音に、とうとう気配が加わった。

  • 第5章 「箪笥(タンス)の裏側」


    ランニング・スタイルの生物(ミニチュア)たちが、並んで(クジ)を引いていた。

  • 第6章 「ごめんね、賞品に成る以外...道が無かったの」


    悪質な "家" との契約は、ティアラが僕を信じたからこその決断だった。

  • 第7章 「人形ノ家杯(ドールハウス・カップ)


    僕は、首に巻き付いた糸を引き千切りながら廊下に走り出た。

  • 第8章 「帰還? 〜煉瓦(ブリック)・ジャングル〜」


    8つ目の扉を潜ったトコロで、僕は見慣れた景色に立ち止まった。

  • 第9章 「その接近は、まるでピノキオを連想させる」


    真後ろの走者が、大きく口を開けた。

  • 第10章 「誰もが囚われを望み、叶ったアトに後悔する」


    副賞の鍵を使って、僕らは家を後にした。

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  • 第4幕 「複数の選択肢からの取捨選択(チョイス)

  • 第1章 「適正ルート」


    標識には『騒ぎ森まで、徒歩4日と8時間20秒±2日』とあった。

  • 第2章 「何処かに流れる血の関係」


    この騒ぎ森は、例の "家" があった探し森のイトコだと語った。

  • 第3章 「歩き回る森の、正常な善意(グッド・ウィル)


    「平原の弊害である "嘘害(ウソ)" は、此処までは届いていないからだよ」

  • 第4章 「地下世界の地下空洞を流れるァヒョ水流」


    地上に溢れ出した流れァヒョ支流、その水源にある村へ。

  • 第5章 「間抜けな男と、間詰(マヅ)みな男」


    支流を溯る為に騒ぎ森が用意してくれた船頭は、両極端だった。

  • 第6章 「道を造った職人の住む」


    ミョミョセ街道(旧:レョレョ街道)は、この村の名――レ・レ・ミョに由来する。

  • 第7章 「リギ・テダル山脈を越えて行け!」


    山を越えることで原色平原の弊害の一つ、"永久循環(ループ)" は解ける。

  • 第8章 「グルダム大沼沢(ダイショウタク)を統べる沼ヘビの王・クグゼ」


    その城は、沼の水と泥を分離させて造られた透明な塔だった。

  • 第9章 「何処でも、親子は...」


    ミョミョセ街道で出会った沼ヘビは、家出した第一王子のようで...

  • 第10章 「王立書庫の文書; 沙漠浸水推進計画の全容について」


    『浸透技術者・ニャリス指示の下、グルダムでの実験は成功』

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  • 第5幕 「月と太陽の沈まぬ地下だから」

  • 第1章 「月蝕のち日蝕、時々公害」


    旅立ちの日の天候は、最悪だった。

  • 第2章 「これぞ最北、と噂されるタスカ・ムカ地所(ランド)


    地上に戻るカギを握るかもしれない技術者を追って、僕らは進む。

  • 第3章 「『ウェルカム・ノヘ ⇒』」


    看板の先には、いつか見たような無人駅が...

  • 第4章 「(ダイヤ(キング)に追放されたレンガ職人・トレリレ」


    ノヘ駅から数十メートルの所に、煙突屋根の工房が見えた。

  • 第5章 「王様の居る村」


    ル村を目指し、熱病に(カカ)ったティアラを背負って歩き出した。

  • 第6章 「正解しかない問題」


    僕には、ロバ耳カチューシャを付けたその人の正体が分かった。

  • 第7章 「名著『他薦No.1自叙伝 〜ル村の地理学者・ェアに(れば〜』」


    西に広がるウ・クラ無間(ムゲン)地帯は、無間地獄(ムゲンジゴクそのものだと云う。

  • 第8章 「スリムな王様 〜ソレは悪夢の如き展開〜」


    強風に飛ばされそうな王様に、ティアラの病が感染(ウツ)ってしまった。

  • 第9章 「メシェェエ北海を目指しての逃亡」


    大陸を南北に走るミョミョセ街道、僕らは再びこの道へと入った。

  • 第10章 「不安な舟旅と、海の道連れ」


    暫く舟を走らせると、蛍光ミドリの斑海豚(パンダイルカ)が寄って来た。

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  • 第6幕 「水は飲めるし、凍ると食える」

  • 第1章 「海の獣たち」


    小さな舟には目も呉れず、獣たちは互いに喰い争っていた。

  • 第2章 「海から見えた(見えない?)ウ・クラ無間(ムゲン)地帯」


    余りにも(ムゴ)い場所であるが故に、人の目には映らない地獄。

  • 第3章 「地獄(ソコ)に在る筈の結末(ミライ)


    思い出から蘇る "人々の記憶" が、何も無い筈の所から煙って...

  • 第4章 「接岸」


    海は氷に閉ざされ、それ以上舟で進むことが出来なくなった。

  • 第5章 「寒さは白さと同じだけ」


    ...吐く息は、この寒さを克明に記録した。

  • 第6章 「(ツタナ)い記憶に頼るか弱き命・二つ」


    いつだったか...KAMAKURAっていうのを、テレビで見たんだ。

  • 第7章 「ヘイ・ジャム」


    僕らは、カチカチに凍った干草のジャムで飢えを凌いだ。

  • 第8章 「どっちへ行こう...?」


    (モット)も...吹雪く雪原の中で、方向感覚はゼロに等しかったケド。

  • 第9章 「食べるのも飲むのも、一緒だし」


    ジャムの残りをティアラに渡し、僕は雪を胃に入れて眠った。

  • 第10章 「辺り一面雪野原(ユキノハラだなんて、気が遠くなりそうな景色」


    寒さで限界を迎えた僕は、「もぅどうにでもしてくれ...」と意識を手放した。

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  • 第7幕 「一番最初の音で揉める人々」

  • 第1章 「泣きながら引き摺って...」


    僕は温かな兎毛のベッドで、目を覚ました。

  • 第2章 「ーラ・カカドラル村」


    村人たちは、一番最初の "音" のコトで、長年揉めていた。

  • 第3章 「事件は、起こるべくして起こった…?」


    無音主張グループ代表・ショスカ村議の死は、瞬く間に広まった。

  • 第4章 「村の名は、災いか?」


    厳しい表情のまま、村長は項垂(ウナダ)れるだけだった。

  • 第5章 「重要参考人・ルト6才」


    少年は、たった一人の家族を亡くし、更に嫌疑を掛けられた。

  • 第6章 「この面会が世界を変える要因と成るコトを、未だ誰も知らない」


    渦中の少年に会った僕らは、一つの疑念を抱いた。

  • 第7章 「被告に、村外退去を命じる」


    部外者である僕らには、刑の執行に口を出す権限は無かった。

  • 第8章 「村長の判断の是非、ソレは誰にも判断(ワカ)らない」


    彼は最初から、何もかもを知っていた...

  • 第9章 「激白と承諾 〜村を守りたいと願う二人の、犠牲という考え〜」


    村長は年端も行かぬ少年に平伏(ヒレフ)した。

  • 第10章 「深夜の出立」


    僕らはルトを連れ、南西にあるというニャリスの城を目指すことにした。

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  • 第8幕 「ルメ」

  • 第1章 「頭上の橋」


    ルトが目を丸くして、天に架かる一本の線を指差した。

  • 第2章 「ニャリスって、気難しい老女(オバサン)だって話だよ...?」


    雪原の(テツ)を踏まぬよう、僕らは防寒・防暑に気を配りつつ...

  • 第3章 「立て札(れど、城(らず」


    『悪智慧も悪運も人望も無き者の入城、基本的に不可とす』

  • 第4章 「だけど『基本的』っていうのは、やっぱり主観でしかないモノで...」


    あちこち探し回ったティアラが、疲れて座り込んだ瞬間――

  • 第5章 「リョセルと名乗りし無精髭」


    出迎えてくれたのは、僕らが探していた浸透技術者(ニャリス)では無かった。

  • 第6章 「中年男の見識 〜人は見掛けによらず、はホント〜」


    「その服装(ナリ)...お前ら、もしかして "天井(ルメ)" から来たのか?」

  • 第7章 「技術者に拾われた少年と、天井の関係」


    彼女は憐れな迷い子の為に、箱までの "直通路" を、自宅の屋上に作り付けた。

  • 第8章 「千年が過ぎた今でも、遅過ぎた "ただいま" は忘れられない」


    少年は残るコトを選んだけれど、彼女は怒るコトも喜ぶコトもなかった...

  • 第9章 「橋の終着地点・マジ」


    「若い頃、丘陵(マジに "箱" を造った...って聞いただけだからなぁ」

  • 第10章 「この城には、見つけられぬ物多数」


    リョセルの辞書に、『整理整頓』の文字はナイ。

is09第9幕

  • 第9幕 「王冠を戴く者と、伝説を継ぐ者」

  • 第1章 「起動用(キー)


    やっとのことで発掘したキーホルダーに、問題の鍵は付いていなかった...

  • 第2章 「大掃除という名の、城内一斉捜索」


    リョセルは、300年振りに(ハタ)きと箒を持った。

  • 第3章 「しっかりしてよ、クラウっ! クラウッ!?」


    頭に出来た大きなコブが、僕を深い闇に誘う――

  • 第4章 「学習机の抽斗(ヒキダシ)の精、王に相応しき者を探して三千年」


    机の中のアレが、消しゴム製の棚に仕舞ってるのって...

  • 第5章 「全員を代表して交渉(ネゴ)ってみる 〜(キー)を譲って下さいナ〜」


    バカ正直(ティアラ談)な僕に、「相手を出し抜け!」なんて...

  • 第6章 「王冠(クラウン)を戴くに値する者」


    戴冠を丁重に断り、名無しの精に僕と同じ名前を()げた。

  • 第7章 「リョセルの問い掛けと申し出」


    確かに、帰らなくちゃならない必要性は絶対じゃないケド...

  • 第8章 「ティアラと僕は、カップ&ソーサーであるか?」


    ...僕は? 「ティアラと一緒で」って、ソレは一組(セット)ってコト?

  • 第9章 「天井(ルメ)寿命(トケイ)と、ニャリスという伝説を継ぐ者の誕生」


    ルトは僕らと行くより、生まれた世界で "時計(リョセル" と共に生きるコトを選んだ。

  • 第10章 「其々の道だから違ってて良いんだ、迷っても良いんだ」


    僕は自分の選択の正当性を信じ、穏やかに眠りに就いた。

is10第10幕

  • 第10幕 「思い返せば、サヨウナラとアリガトウ」

  • 第1章 「伝説に名高き(レジェンダリィ)ニャリス、その智の誉れ高き理由」


    天蓋付き巨大トラベーターが起動する。

  • 第2章 「それじゃ...」


    僕らはリョセル様とルト、二人に短く別れを告げた。

  • 第3章 「この向こうで、今も人が生きてる」


    見えないケド、ずっと向こうには...リテ村や、落下地点が在る。

  • 第4章 「戯曲と偽証とが入り混じる舞台」


    移動二日目の夕暮れ...ティ湖の真上を通過した。

  • 第5章 「気の良い奴らのウソを知り、僕らは何かを学んだか...?」


    目を覚ますと、原色平原と探し森が近付いていた。

  • 第6章 「凡てを遮る魔の山」


    リギ・テダル山脈が邪魔して、向こう側の美しい城は見えなかったケド...

  • 第7章 「踏み越えてきたからこそ、空中からの景色は」


    良かったコトもそうでなかったコトも、全部が思い出だった。

  • 第8章 「この10ヶ月間って、短かったのかな? 永かったのかな...?」


    移動六日目の朝、終着点(マジ)が見えてきた。

  • 第9章 「二つの声が重なって」


    このワケの分からない、シビアでシュールな地下世界(ファンタジー)へ。「ありがと―――っ!!」

  • 第10章 「何となく予想はしてたケドね...」


    その箱は、よく知っているアレだった。支える(モノ)の一切無い...

時計と王冠

is11舞台袖:結

最上階で止まった箱は、
ソーセージ屋 "タルス" の裏口に繋がっていた。
ティアラは店の表に回って、
「...ナニ、コレ......?」って呟いて、
乗ってきた箱はというと、煙のように消え失せ、
町の掲示板には
『行方不明、10日が過ぎる』のニュース。

ウチに帰って、抱き締められて、
泣かれて、怒られ、自室謹慎。
で、その晩――隣接する窓から
ティアラが訪ねてきた。
結局、お互い誰にも話さなかった。
夢ではなかったと信じたから。
僕らは戻って来た。
彼がルメと呼ぶ天井の世界に。
この下では、今も...
地上の時計を持つ心優しき無精者と、
偉大な伝説(レジェンド)を受け継ぐ少年が、
沢山の命と共に生きている。
僕らは、多分忘れない。
良いコトもそうでないコトも、ひっくるめて全部。

時計と王冠

is12舞台裏

誰にも内緒だけど、
取り合えず「タルス」って呼ぶコトにしない?


"including you, we are one set!!"
by Crown & Tiara