prefaceサンディと沼地の王子

序文

ルメからタルスへ渡った11才の少女サンディ。
異変が続く地下世界で、
相棒を得て、救世の旅に出ることに。

主人公:サンディ & セーゼ

サンディと沼地の王子

is00舞台袖:起

何処にでもあるフツーの街の、
何処にでもあるフツーの店。
でも...その店の名前が「タルス」だったら、
もしかして?って思うヒトが、
世界の何処かに必ず居る筈。

私もそんな一人だから、よく分かる。
来年には小学校プライマリーを卒業する年だっていうのに、
諦めきれないでいた。

イケナイことだと分かっていたけれど、
夜中に部屋を抜け出した。
明日、精肉店タルスは閉店する。
店主のイアンさんは、
去年の冬に奥さんを亡くしたばかり。
お店を畳んで、息子さんの住む遠い港街へ
越して行ってしまうのだ。
そのまま建物は取り壊され、
跡地にはアパートが建つらしい。

それで...ね?
私がこれから話すコトを、
アナタは信じてくれる..?

サンディと沼地の王子

is01第1幕

  • 第1幕 「その扉を開く者」

  • 第1章 「AM 2:50」


    薄闇の中、ベッドの下から荷物を引っ張り出した。

  • 第2章 「霧雨を駆ける」


    事前の情報収集が思った以上に役立った。

  • 第3章 「この角を曲がった先」


    私を呼ぶ声がする、そんな気がした。

  • 第4章 「時を巻き戻す」


    一年前に貰った手紙が、私の行動を決定付けた。

  • 第5章 「親愛なる我が友へ」


    お互いに名前を明かさない、そんな不思議な文通が続いた。

  • 第6章 「編曲者」


    彼は、アレンジャーを生業としているらしい。

  • 第7章 「冒険を志す者(アドベンチャラー


    私は彼に、『自分はアドベンチャラーだ』と話した。

  • 第8章 「繰り返す無知と既知」


    その手紙からは、「未知」の文字が切り取られていた。

  • 第9章 「失われし空白ブランク


    そのゼロは、存在を示す為の空白だったのに...

  • 第10章 「言葉を駆使する光源」


    ドアの向こうで、光が私を名指しするのが分かった。

is02第2幕

  • 第2幕 「時間軸の直立」

  • 第1章 「物語の終着点と呼ばれた場所」


    見たこともない色のソラの下で、私は高台に立っていた。

  • 第2章 「上も下も右も左も」


    じわじわとした酸化の進行、そんな褪せた金色の世界。

  • 第3章 「互換性の高さ」


    順応より遥かに高次元の適応能力、それは信じてきた者の周到性。

  • 第4章 「懐中時計の異変」


    力能率トルクの不在が、郵便メールで知らされた。

  • 第5章 「凛然たる女」


    錆びた立像でも、その超越性は非我を宿したままだった。

  • 第6章 「天地を貫く指針」


    その山は、針のように鋭く切り立っていた。

  • 第7章 「passed through the forest of the pride..」


    埃だと思っていたモノは、朽ち果て舞い上がった木の葉の残骸だった。

  • 第8章 「ナビきの(ササヤき」


    その小屋に設置された石碑は、風に関する記述で満ちていた。

  • 第9章 「幾億もの寝物語が眠る場所」


    果てしなく続く凪の平原を越えた先に、灰色の鏡を見つけた。

  • 第10章 「湖沼残影コショウザンエイ


    この場所が、命ある者に残された最後の砦だと分かった。

is03第3幕

  • 第3幕 「ニコルの見る悪夢ユメ

  • 第1章 「沼地の配列者アレンジャー


    その蛇は、沼地の底から拾い上げた殻供汰ガラクタを並べていた。

  • 第2章 「白き大蛇の語り」


    偉大なるルトの喪失と、師傅マスターレフの幽閉が凡ての始まりだった...

  • 第3章 「axis of evil」


    この現象を引き起しているのは、恐らく時間軸タイム・アクシスをも掌握ホールドする「悪の枢軸」。

  • 第4章 「復讐者アベンジャーとしての役割」


    偏光ヘンコウのみを求めるニコルによって、この復讐劇が始まったと噂されていた。

  • 第5章 「異邦人による問い」


    "私が持ってる情報だと、此処は――"

  • 第6章 「王子の答え」


    "もしキミが此処ではない場所で生まれ育ったのなら、多分"

  • 第7章 「死滅の旋律」


    風の音が「(キシむような音」に変われば、ティ湖の刻む時も止まるだろう。

  • 第8章 「雷鳴の報せ」


    この小さな沼地に、直流電圧バイアスが掛かった。

  • 第9章 「偏依ヘンイへと変異する」


    彼が云うには、此処も危険に成ってしまったらしい。

  • 第10章 「最後の便り」


    沼ヘビの王子セーゼは、木の空洞ウロ手紙メールを投函した。

is04第4幕

  • 第4幕 「第二次レジェンダリィ並列書き込み機構」

  • 第1章 「不滅の旋律を奏でる者」


    ソレは伝説を簡単に失ってしまうことのないように、との配慮だった。

  • 第2章 「城に集められた歯車」


    リョセルの指示により、凡ては正しく配置された。

  • 第3章 「レジェンダリィ・ミラーリング・ストラクチャー」


    二重書き込みにより、伝説の消失を防ぐ計画が秘密裏に進められていた。

  • 第4章 「ルトの系譜」


    この時点で、世界の何処にも、ルトの後継者は存在しなかった。

  • 第5章 「鞍馬の意味」


    その語源は、リョセル愛用の古文書に記された「暗い場所」に由来する。

  • 第6章 「Sleeping legendary」


    悪の枢軸の仕掛けは巧妙で、誰もその糸車を気に掛けなかった...

  • 第7章 「不意に訪れる別れ」


    凡庸を名乗りし「偉大なるルト」の炎が消えた午後。

  • 第8章 「相棒の役目」


    食器棚の祖を名乗る精が、その亡骸(ナキガラをガラスケースに横たえた。

  • 第9章 「城に住まう雑多」


    あらゆる場所に顔を見せていた精たちも、いつしか姿を消していた。

  • 第10章 「狙われた左」


    男は日記を閉じ、第一次レジェンダリィユカリの椅子に深く沈み込んだ。

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  • 第5幕 「旅人の書」

  • 第1章 「偉大なるルトの城」


    旅の道連れセーゼは、偉大なるニャリスの城を そう呼んだ。

  • 第2章 「静謐セイヒツの居城」


    沢山の精が居ると聞いていたのに、其処はとても静かだった。

  • 第3章 「訪問者記録」


    城に入るに当たって、私は大きな台帳ノートに名前を記入した。

  • 第4章 「サンディ・ソイルにお届け物でーす」


    城内を歩き回るうちに、私に手紙メールが届いた。

  • 第5章 「リンケージエディタ」


    ずっと文通していた相手と繋がった瞬間。

  • 第6章 「最重要書物」


    セーゼが示した本の表紙には、「リョセルの日記」 とあった。

  • 第7章 「解読者」


    どうやら私がリーダーのようだ。

  • 第8章 「ザ・ラスト・デイ」


    『伝説は、大地を覆うモノによりサルベージされる』

  • 第9章 「ザ・デイ・ビフォア」


    『力のモーメントを取り戻せ』

  • 第10章 「ザ・ファースト・デイ」


    その日記は、直近3日分しか書かれていなかった...

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  • 第6幕 「星の運行」

  • 第1章 「スターリィ・ブック」


    私とセーゼは、初日の頁に記されていた本を探し出した。

  • 第2章 「ドッグイヤー」


    216頁の書き込みが、私たちに これまでの経緯を教えてくれた。

  • 第3章 「傾き」


    偏り過ぎれば、時に自らの主軸さえ見失ってしまう。

  • 第4章 「星座の崩壊に端を発し」


    進むべき方角を見失った海は、一斉に凍り付いたのだと云う...

  • 第5章 「海獣封印処理ビースト・シーラー


    海は、水棲の異形を次々に封じた。

  • 第6章 「鼓動機能停止装置ビーティング・ストッパーの起動」


    全土に満ちていた心音が、一夜にして消えてしまった。

  • 第7章 「ソレはあたかも...」


    星の本には、生命の誕生とは逆の内容が記載されていた。

  • 第8章 「与えられるチャンス」


    凡ての星座が失われた時、見えざる歯車が時を刻み始める。

  • 第9章 「謎の部品パーツ


    "歯車って一体、ナニを示してるの?"

  • 第10章 「知の枯渇」


    力のモーメントについても、イマだ詳細は謎のまま。

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  • 第7幕 「風雨停止」

  • 第1章 「数百年の停止」


    棺の中で、その青年は穏やかに眠っているように見えた。

  • 第2章 「グルダム行路」


    長年プレッシャーに圧倒されてきた沼ヘビが、自ら提案してきた。

  • 第3章 「出立」


    不審がるセーゼを丸め込み、私は城の屋上へと向かった。

  • 第4章 「天空を行く道」


    彼にとっては未知だろうけれど、私はこの道の端を知っていた。

  • 第5章 「沼ヘビの王国」


    一本道を歩き終わると、眼下にグルダムへと続く道が見えた。

  • 第6章 「ニャリス・セーテアの果てなき功罪」


    遥か昔、ココで行われた偉大な実験が、一匹の沼ヘビの人生を変えた。

  • 第7章 「第一王子の帰還」


    もう誰も、彼に過度な期待を掛けることはない。

  • 第8章 「廃墟」


    広大なグルダム沼沢(ショウタクは、何処も錆びた金色に覆い尽くされていた。

  • 第9章 「システム・セーテア」


    王はルトでもリョセルでもなく、息子にのみ浸透実験の詳細を伝えていた。

  • 第10章 「動作停止状態インオペレーティブ


    天候のダウンが、陸の再生を阻んだと考えられた。

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  • 第8幕 「ネジ巻き鳥の不在」

  • 第1章 「機械室エンジンルームに散りばめられた異変」


    私の相棒は、その部屋に入って直ぐ奇妙な感覚に襲われた。

  • 第2章 「思い出の中に消えたモノ」


    セーゼは幼い頃に撮った写真(アルバムを、片っ端から捲っていった。

  • 第3章 「御伽噺ハナシに聞いた沼ヘビ」


    "私には分かる、セーゼなら思い出せる"

  • 第4章 「譲り受けた性質」


    セーゼは、確かに沼ヘビの王としての資質をソナえている。

  • 第5章 「加護の鳥」


    雑草から機械に至るまで、凡ての停止原因が、ネジ巻き鳥の不在から始まった。

  • 第6章 「青い鳥の行方」


    発条ゼンマイ仕掛けの生命が、時を刻むことをめた原因はソコにあった。

  • 第7章 「拡大した動力切れ」


    こんな時に偉大なるルトの知恵を借りられたら...とセーゼが項垂れた。

  • 第8章 「よし! その依頼、オレが受けるぜッ!!」


    旅嚢リョノウから飛び出してきたのは、首から通行証を下げた食器棚の精だった。

  • 第9章 「図書館シェルターは眠らない」


    書籍は常に話し続けている為、生命に満ち溢れている。

  • 第10章 「避難先セーフルーム候補」


    停止(ダウンを避けて隠れ潜むには、王立書庫は最善の場所だった。

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  • 第9幕 「バグを生み出せしモノ」

  • 第1章 「ニャリス手記:青い鳥の行方(グローバル捜索編)」


    『he took the action on schedule』

  • 第2章 「三人寄ってはみたものの…」


    百戦錬磨の万屋(ヨロズヤも、コレにはお手上げ...と苦笑いを零した。

  • 第3章 「ニャリス手記:青い鳥の行方(ピンポイント捜索編)」


    『he did not pay change』

  • 第4章 「ネジ巻き鳥って、お釣り返さないのかッ!?」


    "ダキ、そもそもネジ巻き鳥は金銭の授受はしないんだよ..?"

  • 第5章 「ニャリス手記:天より降り注ぐ土砂」


    『the sands will trace the road and guide the Lord』

  • 第6章 「アラカジめ設定された歯車」


    サンディ・ソイルは、初めからニャリスの描く未来に組み込まれていたのだ。

  • 第7章 「無私存在ニャリスの糸繰り」


    私はタルス在住の相棒たちを伴って、ある場所を目指した。

  • 第8章 「ネジ巻き鳥との対面」


    青玉色(セイギョクイロの鳥が、壊れた自動販売機ベンディングマシンのネジを巻いていた。

  • 第9章 「不備喰鳥バグイーター


    意地悪な機械にとって、判定ジャッジは無視しても構わない些末な事柄だった。

  • 第10章 「ルメの時計」


    "セーゼ、私の持ってる部品でこの子を修理してあげられる..?"

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  • 第10幕 「伝説の牽引者」

  • 第1章 「ノーマルオペレーション」


    自動販売機ベンディングマシンは、領収書の発行まで正しく行った。

  • 第2章 「力のモーメント」


    ネジ巻き鳥のトルクが持ち場に戻ったことで、再びシステムが機能し始めた。

  • 第3章 「見届ける者」


    セーゼは、最後まで私に付き合ってくれるらしい。

  • 第4章 「伝説をサルベージするモノたち」


    お城に戻ってみると、ルトの棺を開けようとする精たちでごった返していた。

  • 第5章 「無精者による統制」


    凡てを無駄なく仕切る姿は、話に聞いた人物像からは縁遠いものだった。

  • 第6章 「予期された邂逅」


    ルトとは初対面だけど、私には酷く懐かしく思えてならなかった...

  • 第7章 「誤解からの解放」


    曲がった筆軸ホルダーの精・ニコルも、漸くこの世界に慣れてきたみたいだ。

  • 第8章 「ぼくは生まれてからずっと、キミが来るのを待ってたんだ..」


    ニコルは、私のコトを「索引編纂者インデクサー」と呼んだ。

  • 第9章 「世界に再び秩序を(モタラす作業」


    ルトは、私とセーゼに索引編纂を依頼したいと云った。

  • 第10章 「くつした ... p2434」


    索引インデックスを作って整理すると、靴下は自ら箪笥に戻っていった。しかし残念ながら、無精者の改善には至らず...

サンディと沼地の王子

is11舞台袖:結

タダの好奇心から始まった、私の冒険。
本当のところ、心の底では
何も信じていなかったのかもしれない。
信じるフリをして、
夢を見ていたかっただけなのかも。

でも、その夢の世界では
確かに生きている命があって、
怖がったり、笑ったり、
ヒトを思いやったり、懸命だった。

私は、あの旅の中で何が出来たのだろう?
最初から殆どの答えを知っていた私は、
ズルをして試験を受ける学生と
変わりなかったように思う。

そんな私を余所に、
沼ヘビの王子は確かに変わった。
一番近くで見ていた私には、
そのコトがとても羨ましく思えた。
彼が獲得したモノを、いつか私も体感したい。
...そんな風に感じたのだった。

サンディと沼地の王子

is12舞台裏

目が覚めると其処は見慣れた自分の部屋で、
呆れ顔の両親が私を待っていた。


"Dear Prince, i am writing to.."
by Sandy Soil