prefaceロサ・ルビギノーサ

序文

今回は、ここまでのお話を
リョセル視点で振り返ります。
レフトとしてルメで暮らしていた頃から始まり、
彼がタルスにやってきた理由(ヒミツが明かされます。

主人公:リョセル

ロサ・ルビギノーサ

is00舞台袖:起

秋が終わりに近付いた頃――
退院して、家に戻った。
病気は何一つ良くなってはいない。
両親は努めて明るく振舞い、
3つ下の妹は、数日前から熱心に絵を描いていた。

そして今日は、誰もが笑顔で祝ってくれた。
遠くの街に住む祖父母もやってきている。
きっと...コレが最後の誕生日になるんだろう。

妹からのプレゼントは自作の絵物語で、
20ページ以上ある超大作だった。
挿絵には、ウネウネした紫色の植物。
一際ゴージャスな服を着た威厳ある女性。
ロバ耳の薄っぺらな男に、隻眼の少年。
雲、勉強机、青い鳥、ヒミツの図書館。
それから――

ロサ・ルビギノーサ

is01第1幕

  • 第1幕 「無精者」

  • 第1章 「呼ばれる」


    呼び鈴が鳴り、オレはのそりとソファから立ち上がった。

  • 第2章 「薄情な問い掛け」


    どうせ面倒を見るなら、2人も3人も一緒だからな...

  • 第3章 「捜索開始」


    この大きな城で、鍵なんて小さなモノを見つけるのは一苦労だ。

  • 第4章 「見送りの朝」


    彼らの選択が妥当かどうか、今の時点では誰にも判断できない。

  • 第5章 「心する」


    残ったこの子を正しく導かなければ、あの人に顔向け出来ない。

  • 第6章 「教育係に預ける」


    タルスには地上(ルメの図書も多く存在し、それらの多くはルトにとって危険なモノだ。

  • 第7章 「散らかす、の定義」


    どうやら、汚れ物や使い終わったモノを放置しているだけで怒られるようだ。。

  • 第8章 「陰から見守る」


    本人たちは至ってマジメなようだが、ルトと精たちの遣り取りは微笑ましい。

  • 第9章 「だらける」


    ルトは幼いながらも、立派な小舅に育っている。

  • 第10章 「王からの手紙」


    クソ暑いのに、山向こうまで来いだと..?

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  • 第2幕 「師傅(マスター)

  • 第1章 「出立」


    グルダムまで連れ歩くより、城に残した方が安全だろう。

  • 第2章 「加熱による融解」


    城から一歩出ただけで、うだるような暑さだ...

  • 第3章 「戻る」


    城の跳ね橋を3メートルも渡らず、中へ引き返した。

  • 第4章 「自動化の波に身を任せる」


    少し多めに食糧を携え、オレは空を行く道に寝そべった。

  • 第5章 「切り札は明かさず、が鉄則」


    沼ヘビの王は、オレの到着の早さに驚いていた。

  • 第6章 「情報を交わす」


    弊害に浸食された水の城は、内側から自壊し始めていた。

  • 第7章 「伝説の現場監督」


    城の書庫を借り、手掛かりになりそうな "あの人" の手記を漁った。

  • 第8章 「結線」


    書庫の隅に隠された緊急連絡網を使い、ニャリス城に繋いだ。

  • 第9章 「借りる」


    時間がない中、マニア向け図書館を代表する書庫の精(ブレーン)の知恵に縋った。

  • 第10章 「弊害対策浄水機構」


    公共事業時代の旧跡ほど、弊害の影響を強く受けているようだ。

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  • 第3幕 「後継者(サクセサー)

  • 第1章 「発光中」


    旅の疲れも取れて、やっと落ち着いた途端にこの騒ぎだ。。

  • 第2章 「動揺の共鳴を制御する」


    柄じゃないんだが、この状況を放置するワケにもいかない。

  • 第3章 「12のうちの7つを開放」


    長年閉ざされてきた「開かずの窓」に解呪の法を施した。

  • 第4章 「匿名性を保つ秘訣」


    書きかけだったルト宛ての招待状(カード)を、慌てて枕の下に隠した。

  • 第5章 「経験値」


    あの場所で研究を続ける御大(オンタイに、面倒を見て貰えるよう手紙を出した。

  • 第6章 「その旅の必需品」


    準備を仕切るダキには内緒で、外ポケットに雨合羽と通行証を捻じ込んだ。

  • 第7章 「非正規の連絡網」


    御大(オンタイからは定期的に報告を受けた。

  • 第8章 「ソノ者、通行証、持参セリ」


    グルダムに入っても無事でいられるよう、先んじて王に知らせを出した。

  • 第9章 「物語の始まりに発つ」


    ルト退所の知らせと時期を同じくして、レ・レ・ミョ村の復興支援に駆り出された。

  • 第10章 「緑青(ロクショウの雲と不孝者の残像」


    3年間の旅の内容について、ルト本人から直接報告を受けた。

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  • 第4幕 「部外者の旧友」

  • 第1章 「或る昼下がり」


    昼寝もダラダラもしないオレを、ルトが警戒の目で見ていた。

  • 第2章 「ちょっと野暮用だ」


    "ちょっ、リョセル様どちらに..!?"

  • 第3章 「仕事」


    数年前から兆しのあった弊害浸食はどうなっているやら...。

  • 第4章 「自転を彷彿とさせるメダ駅」


    自動販売機(ベンディングマシン)の不調が気になったが――

  • 第5章 「弊害の誤飲」


    ルトの話からすると、例の魔物とやらも弊害と関係がありそうだ。

  • 第6章 「斑猫(ハンミョウ)の異常発生」


    トレム・レジ岩山から不安定な(ピーク)へと、黒い霧が掛かった。

  • 第7章 「ジレンマを証明するノヘ駅」


    その技術すら消滅してしまっているのに、遠くから汽笛のような音が...

  • 第8章 「次元を自在に分断する男」


    その弊害調査官は、周囲に恐れられる必要があった。

  • 第9章 「特務大使トレリレ」


    ノヘ近郊に居を構える旧友を訪ね、最新の調査報告書を受け取った。

  • 第10章 「残酷な残効(ザンコウ


    タスカ・ムカ地所(ランド)で見る白昼夢は、この地に出来る最大の抵抗のようだ。

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  • 第5幕 「第三の時計」

  • 第1章 「夜更けに響くラッパ音」


    "ウチは、お宅の支社じゃないんだが..?"

  • 第2章 「ノックの代わりに」


    異変に気付いた精が、ルトを起こしたようだ。

  • 第3章 「海上教育委員会の予告」


    この云いっぷりは「特別な子ども」というより、危険物扱いだな。。

  • 第4章 「嵐の日の出迎え」


    ルトより適任と考え、オレは近くの岸壁まで散歩に出た。

  • 第5章 「喪失」


    隻眼の少年は淡々と "リュトル" を名乗った。

  • 第6章 「Name:-^@&hard #!-$*r」


    独語らしき文字で刻まれたタグは、その殆どが擦り切れていた。

  • 第7章 「複数の天井文字と、唯一の地下世界文字」


    女神ドーリィの書を、この世界のルトが解読して良い筈もなく――

  • 第8章 「書庫の精とフェイタル・スウェア」


    記憶はなくとも、ハルトは "世界" を知るべき者だ。

  • 第9章 「同時に複数の依頼」


    御大(オンタイだけでなく、沼ヘビの王からも...とは、何とも面倒臭い。。

  • 第10章 「得意なことは留守番だ」


    ルトの手が回らない御大(オンタイの方を、ハルトに任せることにした。

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  • 第6幕 「ストレイ・キャット」

  • 第1章 「部屋で死を覚悟した夜」


    目が覚めたら、雪の積もる山の中腹に居た。

  • 第2章 「麓の村」


    その集落も安全だとは思えなかった。

  • 第3章 「麻布の服」


    遠目から見ても、人々の衣類は童話に出てくるような粗末さだ。

  • 第4章 「下流を目指す」


    川縁(カワベリ)を歩いて、人里から離れることにした。

  • 第5章 「水音」


    真っ暗な中で、大小様々な生き物が音を立てる。

  • 第6章 「忍び足」


    2mはあろうかという、ナナフシに似た生き物が川から上がってきた。

  • 第7章 「クキモグラの言葉遊び」


    耳を近付けると、地中から声が聞こえた。

  • 第8章 「昼も夜も騒々しい」


    この森は鬱蒼とした木々が陽光を遮り、昼過ぎには動けなくなる程の暗さになる。

  • 第9章 「草に目印」


    まっすぐ進んでいる筈なのに、同じトコロを歩いている気がする。。

  • 第10章 「眠いのか寒いのかも分からない」


    空腹で目が回る中、鉄の匂いのする木に辿り着いた。

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  • 第7幕 「あの人」

  • 第1章 「焚き火」


    黄色い火の向こうに、女の人が座っていた。

  • 第2章 「手」


    その人の手は、いつでも土のように冷たかった。

  • 第3章 「云わザルを貫く」


    突然現れた相手に、自分の情報を渡すバカはいない。

  • 第4章 「ニャリス・セーテア」


    勝手に話すだけ話して、ただ自分の名を名乗るだけだった。

  • 第5章 「名無しからリョセル」


    どうしてこの人は、見ず知らずの子どもを自分の家に連れ帰るのだろう?

  • 第6章 「噛み殺せば良かった欠伸(アクビ


    蟲を飲み込んだその人の、吃驚(ビックリ)した顔が面白くて――

  • 第7章 「5日間の野営」


    足を痛めたニャリスだったが、ただ苦笑いするだけで――

  • 第8章 「ドーリィ城」


    ニャリスの兄弟たちは彼女を置いて、先に逝ってしまったらしい。

  • 第9章 「突貫」


    城に戻ったニャリスは、取り憑かれたように屋上で工事を続けた。

  • 第10章 「振り返れなかった理由」


    途中でトラベーターが緊急停止した時、あの人の手の冷たさを思い出した。

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  • 第8幕 「創世の女神」

  • 第1章 「あの人だけが消えた部屋」


    本棚には隠すことなく、堂々と『世界の摂理』を記した書が置かれていた。

  • 第2章 「定められた命に付ける価値」


    あの人はコレを読んで、この先で起こるであろう(スベてを知っていたんだ...

  • 第3章 「ドーリィより愛を込めて」


    その中には、レフト・ローゼンシュティール宛ての章もあった。

  • 第4章 「創世の女神を創りし者」


    あの人にも話さなかったが、その神のことは此処に来る前から知っていた。

  • 第5章 「薔薇の後継者」


    時は流れ、オレの元に3人目の「ルメの時計」がやってきた。

  • 第6章 「海中を見詰める瞳」


    彼は超教師ではなかったが、タルスの海を安全に巡ることが出来る。

  • 第7章 「消息の行方」


    ハルトの持ち帰った伝言は、オレが(イマだ見守られる子どもなのだと教えるものだった。

  • 第8章 「使命の一端として」


    地理学者に成りたいんなら、そうすれば良い。

  • 第9章 「譲るべき時計」


    今までの断片的な知識だけでは、この役は務まらない。

  • 第10章 「自分に言い聞かせる」


    "心配するな、まだ役目を終えたワケじゃない"

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  • 第9幕 「後見人(ガーディアン)

  • 第1章 「嫌な予感」


    最近の浸食率の高さは尋常じゃなかった。

  • 第2章 「木枠の精の伝手(ツテ


    用心の為に、グルダム城に棲む親戚を呼んで貰うことにした。

  • 第3章 「非常時の予備としての時計」


    城に戻っていたハルトを、急いで極北へと向かわせた。

  • 第4章 「分解作業」


    有りっ丈のネジ巻き器械を集め、その中から歯車を取り出していった。

  • 第5章 「組み立て作業」


    全員を無事に目覚めさせるには、どうしても大きな鐘の付いた時計が必要だった。

  • 第6章 「静寂の糸車」


    カラカラ回る音が、廊下に響いた。

  • 第7章 「並列書き込み機構(ミラーリング・ストラクチャー


    窓ガラスの精に頼んでおいた "特別製の棺" が役に立った。

  • 第8章 「数百年の停止」


    次のレジェンダリィ候補は、まだ存在すらしていないのだ。

  • 第9章 「三日坊主の日記」


    ハルトが戻った時に備え、目に留まる場所に置いておかなければ...

  • 第10章 「最大の危機」


    意識が薄れ始めたオレは、自室のロッキングチェアに力なく倒れ込んだ。

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  • 第10幕 「第四の時計」

  • 第1章 「川の手前で」


    鐘の音で目を覚ましたオレは、城内が騒がしいことに気が付いた。

  • 第2章 「しっちゃかめっちゃか」


    3階にあるルトの部屋には、棺に群がる無数の精たちがいた。

  • 第3章 「お祭り騒ぎ」


    オレは小さなモノたちを統制し、棺の蓋を開けた。

  • 第4章 「サンディ・ソイル」


    セーゼが連れてきた少女は、かつてルメから迷い込んだ2人の "娘" らしい。

  • 第5章 「中枢の歯車」


    ルトの目覚めで、城は正しく機能し始めた。

  • 第6章 「書に記された伝説の索引編纂者(インデクサー)


    少女に、別口でもう一つ用語集(グロッサリー)を作って欲しいと依頼した。

  • 第7章 「シークレット・インデックス」


    この用語集は後々、ハルトの役に立つ筈だ。

  • 第8章 「曲がった筆軸(ホルダー)の精・ニコルの処遇」


    悪気はなかったとは云え、これだけの騒ぎを起こす力を持っているとなると――

  • 第9章 「まだ測り兼ねる感情」


    セーゼがサンディを見送ると云い張ったので、仕方なく許可した。

  • 第10章 「星の海へ」


    いつか王子がルメを目指すなら、あそこの仕掛けは見ておいた方が良い。少女は、もう此処へは戻れないのだから...

ロサ・ルビギノーサ

is11舞台袖:結

レジェンダリィを継ぐ者には、
特別な時計が与えられる――これは妹の創作だ。

オレは、どうやってルメから
こちら側に来たのか、覚えていない。
そもそも向こうと此処が繋がった
原理の説明はあったか?
最初こそ死後の世界かとも考えたが、
かつて此処を去った者たちの娘が世界を救った。

ニャリス・セーテアとも、
二度と会うことはないと思っていたのに。
まったく...こんな裏設定があるなんて
聞いてなかったぞ?
だが、そんな荒唐無稽な異世界にあっても、
リョセルという混入物が、
迷子のレフにとってのニャリスと同義なら――
この人生も悪くはない。

そう云や、妹の話ではその奇妙な世界で、
オレは「不老不死の導師」になるんだとか..。

おい、ルート・ローゼンシュティール。
ビックリするぐらい長寿だが、
全然「不老」なんかじゃなかったぞ?

ロサ・ルビギノーサ

is12舞台裏

独語じゃ、(レフトは "links" だから...かもな。


"In my memory, 
she was always on my right side."
by Left Rosenstiel