prefaceオーディナリィ・ルト

序文

第1話でタルス残留を決めたルトの後日談。
弊害が広がり続ける世界での、少年の成長物語。
第3話では「1幕=1年」で時間が進みます。

主人公:ルト

オーディナリィ・ルト

is00舞台袖:起

世界は多様で、
個々の期待は裏切られるコトも有る。
どんなに強く願っても、
お気楽でご都合主義的な最終幕(エンディングに必至は無い。
人と人の関係は一様では無く、
利害による繋がりで保たれていることも多い。
必要なら僕は舞台から下りるし、
物語の登場人物である以上、
そう()るべきだと思っている。

少し前に...友人と出会い、そして別れた。
僕は地上(ルメでの可能性を選択せず、此処に残った。
彼らとの別れもまた、
僕にとっての可能性だと信じたからだ。

今は偉大なるニャリスの城で、
無精者と一緒に暮らす日々。
もう直ぐ文字の読み書きを習うコトになってる。
…ってコトで、ここから先の僕の人生を、
練習がてら日記に残してみようと思う。
もしヒマなら、付き合ってよ。
ちょっとは退屈(シノぎに成るかも。

オーディナリィ・ルト

is01第1幕

  • 第1幕 「ルト in レジェンダリィ・ニャリス・キャッスル」

  • 第1章 「靴下散乱」


    ...っていうよりコレは、靴下が "産卵" したんじゃないのかな?

  • 第2章 「無精者 vs 僕」


    「リョセル様、今日という今日は云わせて貰いますッ!」

  • 第3章 「起きるとピカピカの靴」


    木靴の精は、恥ずかしがり屋さんらしい。

  • 第4章 「夜型」


    眠れない夜に誘うと、ランプの精は一緒に遊んでくれる。

  • 第5章 「掃除も良いケド勉強もしろよ?なんて、どの口が。。」


    ウチの無精者は、勉強机の抽斗(ヒキダシ)の精に僕のコトを任せたらしい。

  • 第6章 「今日からオイラが教育係だぜっ」


    ちょっと意固地なクラウンは、勉強机に誇りを持っていた。

  • 第7章 「コイツがオイラの友達、インク壺の精」


    読み書きに関してはプロだけど、インクの変色には(ウルサ)い。

  • 第8章 「友達...とは言えないケド、知り合いの書斎の精」


    偉そうにしてるケド、僕が知りたいコトは何も知らなかった。

  • 第9章 「ちぐはぐなキルトの精」


    彼......彼女...?の人格? (格?は、入れ替わりが激しい。

  • 第10章 「どうやって勉強に集中しろって云うんです...?」


    城中に何かしらの精が居て、更に無(者まで――

is02第2幕

  • 第2幕 「誰が主役...?」

  • 第1章 「城での生活も2年目に突入」


    7才の誕生日を、沢山の精に祝って貰えるコトとなった。

  • 第2章 「大広間の精の、歩幅の計算 (誕生日なのに宿題...?)」


    彼女はのんびり屋さんで、10m進むのに1時間掛かる。

  • 第3章 「テキパキ、シャンシャンが口癖」


    この城で出納管理をしているのは、食糧庫の精ただ一人。

  • 第4章 「優しい歌声の主」


    食糧庫に出入りする風の精が、食品を冷やして呉れている。

  • 第5章 「いつでもオレを頼って呉れヨ」


    食器棚の精は面倒見の良い、気さくな精だ。

  • 第6章 「食器洗ったアトの水は戻さないで頂戴っ!」


    井戸水の精は潔癖症で、鯉と仲良しらしい。

  • 第7章 「オーブンの精は寂しがり」


    熱くなると、「もっと近くで話そうよ」って云うケド......だよね...?

  • 第8章 「ボクの邪魔しないでよっ! そっちこそオイラの邪魔すんな!」


    どうやら箪笥(タンス)抽斗(ヒキダシの精と、クラウンは犬猿の仲らしい。。

  • 第9章 「赤絨毯は、踏まれるのがおキライ」


    彼は驚くホド怒りんぼで、いつも顔を真っ赤にしている。

  • 第10章 「ねーねー、また新しいヌイグルミ縫ってよー?」


    子ども部屋の精は縫い包みが大好き。でも(ホツ)れを見つけると...

is03第3幕

  • 第3幕 「(オビヤ)かされる日常」

  • 第1章 「平和な(?) 3年目の幕開け」


    小さなイザコザは有ったけど、ウチは平和そのものだ。

  • 第2章 「ルトの文通記録:ミョミョセ街道の沼ヘビ・セーゼ」


    グルダムの第一王子は、マジメ過ぎてプレッシャーに弱い。

  • 第3章 「或る夏の日の手紙」


    『弊害ヒロガル。リョセル殿ノ救援モトム。沼ヘビノ王ヨリ』

  • 第4章 「留守を預かる者」


    その日から僕は、枕の下に失くせない "鍵の束" を置いて眠った。

  • 第5章 「本日の係争」


    リョセル様が居ないのを良いコトに、精たちは好き勝手ばかり...

  • 第6章 「行方不明者・箪笥(タンス)抽斗(ヒキダシ)の精」


    昼過ぎから、皆の箪笥(タンスが開けられなくなってしまった――

  • 第7章 「城内アナウンス」


    迷子のお知らせをします。...けれど、誰も彼の名を知らなかった。

  • 第8章 「捜索隊結成」


    僕らは手分けして聞き込みを開始した。

  • 第9章 「ニャリス城の七不思議」


    肖像画の裏、甘い匂いの壁、洗濯カゴ、開かずの窓、声のする納戸...

  • 第10章 「最後の鍵で開く扉」


    僕は鍵束の、最後の一本を手にした。

is04第4幕

  • 第4幕 「非常時の発信(サイン)

  • 第1章 「おかえりなさい」


    一年間の調査を終えて、リョセル様が城に戻った。

  • 第2章 「名声の表舞台」


    あの迷子事件以来、僕のトコロへは相談者が引切り無しに訪れるようになった。

  • 第3章 「相談窓口、正式に発足」


    コレも修行の一環だ、ってリョセル様が仰るなら。。

  • 第4章 「パンク寸前」


    そのうち、一人じゃ到底(コナ)せないと分かった。

  • 第5章 「その名、ダキッョ・シ(通称・ダキ)」


    自ら "食器棚の祖" を名乗る彼を、相棒として迎え入れた。

  • 第6章 「ルト&ダキ相談センター」


    僕と食器棚の精は、城内の大掃除から始めた。

  • 第7章 「整理券の発光」


    配っていた整理券が、突然光り始めた。

  • 第8章 「静止するニャリス城」


    右往左往するだけの僕らを叱り付けたその人は――

  • 第9章 「名声の舞台裏」


    無精者の暗躍が有ったコトを、僕らだけが知っていた。

  • 第10章 「(スベての収拾」


    僕とダキは、その(ヒト)の隠れた顔を見た。

is05第5幕

  • 第5幕 「偉大なる伝説」

  • 第1章 「扉の裏の扉」


    納戸の扉のウラ側で、僕はもう一つのドアノブを見つけた。

  • 第2章 「再び開かれる、マニア向け図書館」


    飾り彫刻の埃を払って(クグ)った扉の先に広がっていたのは――

  • 第3章 「書庫の精」


    博識にして(格者の彼は、書斎の精の師匠らしい。

  • 第4章 「ニャリス・セーテア武勇譚 / 全236巻+付録2巻」


    非日常を切望し、僕とダキはレファレンス係就任を快諾した。

  • 第5章 「ルとレの喧嘩 〜ラルレ氏の場合〜」


    レは "ルの半分" だと思って、劣等感を抱いていた。

  • 第6章 「仲裁役としてのフ」


    ラが "寝転がったル" と仲が良いなら、レもフとなら仲良く出来るだろう。

  • 第7章 「ワとムの綱引き 〜ワ―ム氏の場合〜」


    綱を縦にするコトで、ワ|ム氏は(ヨウヤ)く落ち着いて呉れた。

  • 第8章 「私とあのヒトって、同一人物なの?」


    ツメマさんは、僕を頼って遣って来た。

  • 第9章 「ワタシとあの人って、別人だと思う?」


    シナムさんは、ダキの方へ相談に来た。

  • 第10章 「傾きとコギト・エルゴ・スム」


    「似てるからって、それで同じ(ヒト)ってことにはならないよね?」

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  • 第6幕 「生きる程に、思い出に近付く」

  • 第1章 「時は過ぎ行き――」


    僕は、"かつて別れた2人" と同じ年齢に成った。

  • 第2章 「旅立ちの招待状(カード)


    弊害は、原色平原を飛び出して近隣を侵食し続けているらしい。

  • 第3章 「持ち物リスト」


    ダキが用意して呉れたリストには『消毒薬』..?

  • 第4章 「沼ヘビの湖沼(コショウ、城ヨリ南ヘ下ル」


    博識なセーゼから、何か有益な情報を貰えると良いケド――

  • 第5章 「リテに(む魔物」


    僕の行く手を遮ったのは、"レイン" という魔物だった。

  • 第6章 「クサムラのムラサキ」


    地平線を隠すように、ソレは遠くからでもよく見えた。

  • 第7章 「道中、調査対象多数につき」


    採取サンプルを選ぶ必要があると分かった。

  • 第8章 「敵地潜入」


    生物の痕跡は無い。...でも辺り一面に漂う気配が、危難を(シラ)せる。

  • 第9章 「傷口からの侵食」


    草で切った指先に滲んだ血の色が...

  • 第10章 「若いの、どうしたー?」


    突然呼び掛けられて振り返ったけど、誰も居な――

is07第7幕

  • 第7幕 「世界にカミが残る意義」

  • 第1章 「博士、今日も空振りです...」


    僕は(ノミのデコレーション博士と、共同解明戦線を組んだ。

  • 第2章 「レ・レ・ミョ滞在 ~弊害の影響範囲外~」


    確か荷物の中に、ダキが入れてくれた "通行証" があった筈。

  • 第3章 「グルダム王立書庫」


    憧れの冒険学者・ニャリスの手記が読めるなんて...

  • 第4章 「プロトタイプ・セーテアに関する記述1」


    彼女は、かつて存在したと云われる "神" の実在に言及した。

  • 第5章 「彼女がもう少し濃厚であれば」


    手記の前半は『イスァティリス・セーテアの名が貰えた筈...』で終わっていた。

  • 第6章 「謎の人物1・推察の限界に挑戦する章と心得よ」


    博学なるニャリス以上に『優秀である彼女』って...?

  • 第7章 「プロトタイプ・セーテアに関する記述2」


    ニャリスも存在に触れるだけで、ソレ以上の情報は無かった。

  • 第8章 「謎の人物2・推察するにも限界が有るって知ってます?」


    僕はリョセル様に送る手紙を、その一文に込めて投函した。

  • 第9章 「......ぇと...初めまして、ルトって云います...」


    平原で出会ったその "(ヒト)" は、「博士の馴染み」だと名乗った。

  • 第10章 「博士、前述のセーテアについて語る」


    「ふぅ〜む、厳密には "3つのセーテア"...か」

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  • 第8幕 「帰結する為、前提に立ち戻れ」

  • 第1章 「クラリ草とダラリ草の勢力図」


    平原には、二種の草が生えている。

  • 第2章 「ダラリ草の性質を利用する」


    その時、僕の脳裏に浮かんだのは "無精者" の顔だった。

  • 第3章 「解明★ルトレーション研究所」


    平原の隅に、弊害を(モノ)ともしない小さな掘っ建て小屋が完成した。

  • 第4章 「弊害の一つ・憂鬱(メランコリィ)


    それまで研究所の中で残像と談笑していた筈の博士が、突然泣き出した。

  • 第5章 「弊害研究の成果」


    目の前の不孝者の残像が、カギを握っている。

  • 第6章 「ニャリス手記:イィからナイショにしとくれっ」


    抜粋『憂愁(ユウシュウ)が深過ぎて、幽囚(ユウシュウ)の身と成った有終(ユウシュウ)の存在である』

  • 第7章 「そもそも不孝者の残像である彼女は、どういう状態であるか?」


    『僕の結論としては...キミは "(だ死んでない" んだよ』

  • 第8章 「(だ命の始まらぬセーテア」


    残像の "不孝意識" が薄れるに従って、弊害は形骸化するだろう。

  • 第9章 「役目を終える者・ルト」


    そして "不孝の影" は消え、"有終の命" が始まった。

  • 第10章 「明快!デコレーテア研究所」


    他で独自に広がる腐蝕を止める為、還元剤の研究を始めるらしい。

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  • 第9幕 「見えなくても確かに在るモノ、確かに在るのに見えないモノ」

  • 第1章 「"第2のセーテア" を捜し求めて」


    別れの前日、博士とイスァティリス・セーテアに助言を求めた。

  • 第2章 「一人きりで迎える14の誕生日」


    ニャリス城を出て、3年余りが過ぎようとしていた。

  • 第3章 「物語の始まりに立つ」


    不安定な(ピーク)に登るには、トレム・レジ岩山を越えなければならない。

  • 第4章 「友より得し思い出の一片(ヒトカケ


    彼らの語ってくれた旅の思い出には、抜け道が存在した。

  • 第5章 「遅くて、不味くて、安い店」


    譲り受けた試供品(サンプル)を撒いたコトで、その弊害は少し薄まった。

  • 第6章 「調整中リターンズ」


    立ち寄った廃駅の自動販売機(ベンディングマシン)は、お釣りを返してくれなかった。。

  • 第7章 「(イビツ)であるが故の調和」


    世界を構成する部分(パーツ)から(スベての弊害が消えるのは、果たして正しいか?

  • 第8章 「胸中を吹き抜ける懐かしさ」


    その時、城で顔馴染みだった風の精が、僕の頬を撫でた。

  • 第9章 「風の精に記された秘密」


    その背に "第2のセーテア" の名が刻まれていたのは、必然が(モタラした再会による。

  • 第10章 「彼女の名を呼べば、緑青の雲が返事をする」


    降雨を嫌う雨雲は、誰にも相手にされず、寂しさを増大させていた。

is10第10幕

  • 第10幕 「凡庸な日々(オーディナリィ・ライフ)

  • 第1章 「月キツツキとの和解」


    プロトタイプ後記として纏めた書簡を、グルダムに届けるよう頼んだ。

  • 第2章 「ルト returns to レジェンダリィ・ニャリス・キャッスル」


    僕は、住み慣れた城で眠りに就いた。

  • 第3章 「母なる靴下の海」


    心の底からイヤな夢を見た。。

  • 第4章 「相棒 ~ルト&ダキ~」


    窓口再開による依頼殺到で、(スベての糸電話が塞がった昼下がり。

  • 第5章 「相談件数ナンバーワン」


    1/4が無精者へのクレームだってコトは、平和な証拠。

  • 第6章 「無精者(リョセルは一日にして成らず」


    その無精を "大事業" と云い切る男は他に居ない。

  • 第7章 「忙殺の果てに」


    今日が自分の誕生日だ、ってコトも忘れていた。

  • 第8章 「伝説(ニャリス)を継ぐ者」


    15の誕生日プレゼントに貰ったモノは、"レジェンダリィ" の称号だった。

  • 第9章 「伝説(ニャリス)を拒む者」


    リョセル様は、自らを "部外者" だと思っている節がある。

  • 第10章 「自らを(マットうする者」


    憧れる気持ちは消えないケド、伝説は完結している方がカッコイィ。今は、皆が "いつもの顔" で居られる日常を支えたい。

オーディナリィ・ルト

is11舞台袖:結

シニカルだシニカルだ、って自分では思ってるケド。。
甘いだけじゃ遣ってけないのも事実。
手を振って別れたトモダチとは、
もう二度と会えないだろう。
ソレは思い過ごしじゃない筈で――。

だけど本当に大変な時、
ヒトは一人じゃなかったりする。
シニック代表にしては現金な話だけど、
どんなに頼りなく見えても、
いざって時には助けて呉れる誰かが居て、
そこに "利害の一致" っていう理由(ウラ)
あったとしても、感じた心強さは消えたりしない。

そういう艱難(カンナン)を切り抜けて初めて、
僕らは得難いモノを得、非凡を冠するようになる。
ソレって、無いより有った方が良いって
云われたりするものだケド――。

個人的にも、辛いことは
少なければ少ないほど良いと思うから。
どんなに「凡庸だ」って軽んじられたって、
やっぱり "穏やかで普通な日々が一番" だ。
僕はそう思う。

オーディナリィ・ルト

is12舞台裏

だからリョセル様は、
呆れるくらい "だらしない" 方が良い。


"you could consult the L&D counseling center."
by Ordinary Luto